匿名
ハワイ在住のものです。いつも楽しく拝見しております。 「ハワイ料理」とはなんとも雑な括りですが、あえて。 ハワイ料理について、日本での受容のされ方や、伝統的なものなども含めて、もし稲田さんに何かしらのイメージ、ご意見があればご教示願いたいです。
ハワイには一度だけ行ったことがあります。到着して最初に食べたのがロコモコでした。旅行会社からもらったチケットで空港内のレストランで振る舞われるというもので、実のところそんなお仕着せなんて期待できないからスルーしようと主張したのですが、同行者に反対され半ば渋々食べました。 ところがこれが良かった。ライスの上にマックのパテみたいなハンバーグ、うすらぼんやりしたグレイヴィソースがかかって、あとはフライドエッグが乗ってるだけ、という色味もアクセントもない地味な食べ物でしたが、それがゆえの好ましさがありました。日本でなかなかロコモコを食べようという気にはなれませんが、こういうロコモコだったら、むしやしない的にたまに食べたいと素直に思えました。 サイミンにもちょっと感動しました。これまたうすらぼんやりとした食べ物でしたが、ラーメンには無い、日常の中でスッと食べたい良さがある。一般化していいかどうかわかりませんが、ハワイ料理って、おいしくしようとしすぎない、肩の力の抜けたおいしさが魅力だと思っています。 日本では既に廃れた地味すぎるタイプの謎洋食的な要素もあり、これまた素朴すぎる正体不明な多国籍料理もあり、そこにライスがディッシャーで抜かれて好きなスクープ数添えられるというスタイルも合理的かつ良い抜け感があって、これは日本でも普及すればいいのにと思いました。ただしその米そのものがあまりおいしくないのだけは残念でした。そのあまりおいしくない米がギュウギュウに押し固められたスパムむすびを食べた時は、「惜しい!」と心の中で叫んでしまいました。スパム(レスソルトではない)の厚さとかサイズ感は最高だったのですが。あとマラサダが油っぽくてくっそ甘かったのは最高でした。粉糖でむせかえる喜び。伝統料理ではポイとルアウが食べたかったのですが、その時はどちらも出会えず残念でした。 日本でもハワイアンカフェみたいなのはありますが、当然のことながら料理は現代日本基準でアレンジされて、しっかりおいしく仕上げられます。もちろんそれは真っ当な企業努力であり、自分だって同じ立場なら間違いなくそうするでしょう。ハワイ料理って根本的な部分は、(王国伝統料理を除けば)日本人にとって親しみやすいものが中心なので、それをより日本人基準でおいしくアレンジすることはある意味で簡単だと思います。しかしそれを積極的に食べたくなるかと言うと、それはまた全然別の話です。 フードコートとかにもっと素っ気ないハワイ料理があればとても嬉しいですが、日本の熾烈なフードコートにおいては、間違いなく全テナント中でぶっちぎりの売上最下位となり、気が付いたら契約更新前に退店しているパターンでしょう。 ハワイ料理って、沖縄の老舗ステーキハウスにも通じる好ましさがあるとも感じます。競争の激しい市場に新規で打って出ても簡単に弾き飛ばされるかもしれないけど、地元では多くの人々に安らぎを与え続けている存在。そう言えば沖縄のステーキハウスで定番のぼんやりとしたクリームスープ、あれとそっくりなものをハワイでも食べました。あれがファミレスのスープバーにもあったら相当嬉しいのになあ。。