
匿名
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イナダマニアの者です。ご著書のレシピを愛用しており、最高のレシピ本だと思っています。しかし、エリックサウスの冷凍カレー(例えばポークビンダルー)を取り寄せて食べ比べますと、冷凍カレーの方が格上感がございます。言語化するなら「レストランで出てくる料理感」です。私の技術不足でしょうか?それともレシピ本では明かさない小さな秘訣が大きな壁になっているのでしょうか?(おそらく両方だと思いますが笑)不躾で失礼な質問でしたら廃棄してくださいませ。
まず、レシピ本ではお店の味の再現は目指していません。時々「エリックサウスの味が自宅で楽しめるなんて最高!」みたいな感じで評価していただくことがあり、ありがたいのと同時に、それは絶対に違う……という困惑もあります。 レシピ本には本ごとにテーマがあります。僕のこれまでで言うと「なるべく短時間、できれば15分以内に完成」「なるべく2ステップ以内に収める」などがあります。店の再現がテーマではないのです。まあ、僕の自宅の再現という部分はある程度ありますけどね。 とは言えそれだけでもつまらないので、どの本でも多少テーマから逸れても、エリックサウスの味に近いものが再現できるレシピは一部収録しています。 近著の『インドカレーのきほん〜』は、テーマが「手間や時間はかかってもいいから誰もがおいしいと納得するものを」というものなので、今までで最も「お店っぽい」レシピになっていますが、それでもそれはエリックサウスの再現ではありません。(もちろんこれも一部には含まれています。) とりあえず既存のレシピ本をベースにお店の味に近付けるには ・玉ねぎは書いてあるより長く炒めよう ・肉は書いてあるより長く煮込もう ・チリ、コリアンダー、ターメリック以外のスパイスは全て挽きたてを使おう ・出来たてではなくちゃんと落ち着かせてから食べよう といった感じでしょうか。もっと言えば店は一回に作る分量が大きく違うので、温度変化のカーブがゆるやかになり、また、スパイスや塩の分量がより精密になります。そのあたりも少し意識するとよいかもしれません。 あと最後に、これは昔から不思議なのですが、同じレシピで作っているつもりでも、繰り返し作れば作るほどなぜか自然とおいしくなっていきます。 僕は料理に精神論やスピリチュアルを持ち込みたくないのですが、この現象には説明がつきません。例えば店でも、レシピを作ったのは自分であっても、それをスタッフに伝えて1ヶ月後に味見をしたら、毎日のように繰り返し作られたそれは、自分が最初に作ったよりおいしくなっています。もちろんレシピ自体は変わっていません。なのにだいたいそうなるのです。 再現性、再現性といつも言ってますが、本当はまだまだわからないことだらけです。