匿名
イナダさんは料理を作る時の計量の大事さをいたるところで発信されていると思いますが、料理をはじめた頃から計量していたのでしょうか? それとも何年か経って計量の大事さに気付かれたのですか? 計量の大事さに気付いたきっかけやエピソードがあれば教えてください!
僕は本格的にプロの世界に入ったのが遅く、20代後半でした。 年下の(殆どがヤンキーの)先輩たちは、料理に関する知識なんて極めて乏しいにも関わらず、実際料理を作るとなると、塩でも醤油でも感覚だけでほぼ一発でバシッと味をキメてました。 やべえ、こいつはかなわねえ、と思いました。 そしてそこに最短で追いつく方法こそ計量だと思い至りました。 先輩たちの目を盗んで料理する前と終わった後の塩や醤油の重量を測って差分を出したり、手元をガン見して重量を推定してすぐにメモっておいたり、同時にその時の鍋中重量も推定してやっぱりメモっておく、みたいなことをやりました。 もちろん自分が作る場合はあらゆるものを最初から数値化しました。 そうしてくうちに、それらのデータから、最適なバランスに一定の法則生のようなものがあることがわかり、そうなるといちいち全てをはかる必要もなくなりました。 「最短で追いつく方法」としては大正解だったと今でも思ってます。 それから10年以上経って、この方法はもう一度役に立ちました。 カレーを作る時、インド人コックさんは目分量でスパイスも塩もバンバン入れていきます。傍目にはいいかげんなように見えますが、それでバチっと味が決まる。またもや、こいつはかなわねえ、と思いました。 なので自分は独学の中で、全てを徹底して測り、それをひたすらログ化していきました。 インド料理は最初のうちは、片っ端から洋書のレシピ本を手に入れてそこからのスタートでした。今ならネットでもある程度なんとかなるのでしょうが、当時はそういう時代ではありませんでした。 洋書のインド料理レシピはとにかく不親切です。塩や水が「適量」なのはもはや当然として、他もいろいろ適量。野菜のサイズも全然違います。玉ねぎ一個が日本の玉ねぎ1/4くらいにあたることは後に気付きましたが、トマト、ニンニク、レモン、全て全然違います。ほうれん草の計量単位は「カットして〇カップ」です。 ちなみにそういうレシピ本は(日本で暮らしていると考えられないことですが)仕上がりの写真はごく一部しかありません。工程写真なんて一切ありません。 なので一番難儀だったのは最終工程の「程よい濃度まで煮詰める」です。こんなの何も書いてないのと一緒です。 そこで僕は気付きました。材料の計量の重要さもさることながら、同じかそれ以上に重要なのは仕上がり重量の計量です。 そしてそのことは後に、自分のレシピを自分以外の人に再現してもらう際にも役に立ちました。 お店のメニューもそうだし、レシピ本等でもそうです。 今は和食でもインド料理でも別段計らなくても作れるようにはなっているのですが、人に伝えるという使命があるうちは計り続けてログ化し続けるし、それが上達の最短ルートであることも伝え続けるだろうなと思います。