
匿名
¥1,000
鍋の美味しい季節になってきました。 先日、トリュフ鍋の素というのを使ったのですが、「小さいタレのパックを300ミリの水で希釈してください」「仕上げにトリュフオイルをかけてください」というだけでものすごく美味しい鍋になりました。 そこでふと思ったのですが、こんな数ミリのタレだけでこんなに美味しくできるなら、自宅でも作れるのではないか?です。さすがにトリュフ鍋は特殊な材料が必要そうですが、普通の鍋の素なら作れそうな気がします。もちろんこの数ミリに企業努力が凝縮されているのはわかっているのですが…。 鍋の素ってなんであんなに美味しく鍋ができるんでしょうか?自宅で作るならなにかコツはありますでしょうか?
例えば300ccの水に「つゆ」として必要なうま味を加えるには、味の素単体で1gもあれば充分です。実際にはこういう製品は、他に核酸系調味料などを組み合わせてより強く複雑な味わいに設計にします。また他にも様々なエキスやエッセンス的な風味原料も複雑に組み合わせることで味を完成させるわけですが、これらはいずれもごく微量で強烈な効果があるので、濃縮タレは少量のポーションにまとめることができます。 この技術自体はインスタントラーメンを始め様々な商品に幅広く使われているのですが、鍋のつゆが有利なのは、そこに野菜や肉などが加わることで調理が完成する点です。 つまり、調味料やエキス類などの組み合わせ(プラス、別添オイルによる油溶性物質の添加)だけでもいくらでも強い味は作り出せるとは言え限界もあり、そこ、つまり工業的な調合の弱点を、野菜や肉などの具材から自然と抽出される成分でカバーできるということ。これはカップラーメンなどには無い強みです。 しかし逆に言うとこれは、野菜や肉などの具材がしっかりあれば、工業的な調合の部分は本来なら無しか、少なくとももっとシンプルでも良い、ということでもあります。もちろんそこは人それぞれの好みなので、工業的な調合のインパクトの強い味を求める人はこういった製品をチョイスすることになり、実際チョイスする人が多いから、スーパーにはさまざまな製品が並ぶわけですね。 さて、こういったものを自家製で作れるかどうかで言えば、はっきり言うとハードルは高いです。うま味系調味料やエキス類を複雑に調合することは少量では難しいし、そもそも材料を揃えたら個人では死ぬまで使い切れないでしょう。 しかし、もっとシンプルで良ければ作れますし、あくまで個人的にはそっちの方が味としては好ましく思います。一例としては僕が『ミニマル料理』に掲載した「必要充分鍋スープ」というものもあります。そのレシピのプロトタイプは過去にTwitterでも流しているはずです。ダシは取らず、醤油と味の素がベースです。 この場合の味の素をハイミーにしたり、醤油をダシ醤油にしたり、各種顆粒スープなどを加えたりして複雑化していったら、市販の商品に近付いていくということになりますが、同時にそれは家庭料理「ならでは」の良さが失われるということでもあり、だったら素直に市販品を買った方がいいのかもしれません。