
匿名
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各国料理のグルタミン酸食材に興味があります。日本なら昆布や味噌、イタリアはトマトやチーズ、ハンガリーはパプリカ、韓国やタイなら唐辛子などグルタミン酸を多く含む柱となる素材があることが多いと考えています。そのなかでフランス料理に詳しくないこともあり、グルタミン酸を多く含むメイン食材はあるのか?と疑問に思っています。私が知らないだけでフランス料理にも使われているのか、なくても成立するのかご意見を伺いたいです。ちなみにインド料理もこれだ!というのが思いつきません。たまねぎでしょうか?
まず根本的に、多くの野菜にはグルタミン酸がそれなりに含まれています。僕はうま味調味料の適正値を料理の完成重量に対して0.05%としていますが、野菜そのものにもそれに近い量が含まれています。その中で突出してるのがトマト(0.1〜0.3%)です。 なので、1000gの野菜をクタクタに煮て1000gで仕上がるような料理なら、特にグルタミン酸を多く含む食材を加える必要はないということにもなるかと思います。フランス料理の場合そこにトマトや塩蔵肉を少量加えることでうま味をブーストすることになりますが、全体量からするとわずかであることが多いので、ブーストの幅はそう極端なものでもないとも言えます。 インドの野菜カレーも同じようなもので、調理に水を加えたとしてもそれは最終的にほぼ蒸発します。インド料理におけるトマトの歴史は実は浅いのですが、近代になってあっという間に普及して、うま味ブーストの重要な食材となっています。 日本の煮物は、たっぷりの汁の中で野菜に歯応えや形状を残しながら煮る、という手法が主流なので、その汁の部分には何らかの方法でうま味を加えることが必要になり、そこでダシや発酵調味料が必須になるわけです。 ヨーロッパでダシや発酵調味料にあたるものは肉そのものだと思います。肉はイノシン酸というイメージが強いですが、グルタミン酸も多く含んでいます。特に鶏肉はそのバランスが良く、鶏肉と水を火にかけるだけで、日本の一番だしに匹敵するスープが取れます。 シチューやカレーは日本では「とろみのある汁の中に肉や野菜の具が加わったもの」というイメージですが、本来は「肉や野菜を加熱調理した結果、そこから染み出した水分でうまい汁が副産物的に生成されたもの」です。先ほどの「1000gの野菜料理」と同じロジックで、そこには必要最低限のグルタミン酸濃度はすでに担保されていることになります。 フランス料理だとそこにベーコンなどの塩蔵肉がブースト要員として加わることが多く、いわば味噌や醤油の立ち位置でしょうか。 まとめると、欧州やインドでは「凝縮」によってグルタミン酸濃度を上げる手法がメインで、日本では「添加」がメインである、と言えるのではないかと思います。クラシックなフレンチのソースはまさにその典型ですね。 グルタミン酸食材は各国で多かれ少なかれ使用されていますが、その位置付けや重要度を考える時は、この違いに留意すると良いのではないかと思います。 ここでは書ききれませんが、中国やイタリア南部、東南アジアなどでは「凝縮」と「添加」の重要度が中間的になったり、それらは外国料理の中でも特に「日本人好み」だったり、と考えていくといろいろ面白いと思います。