
匿名
先日某叱られる系教育番組でみりんの効果・役割について説明されていたのですが、結局酒と砂糖でもほぼ同じでは?と思ってしまい、いまいち明確な意味合いがわかりません。イナダさんはみりんを使用する時、明確な意図を持って入れますか?その分量やレシピへの組み込み方などのロジックがあればお聞きしたいです。
みりんの効果云々以前に、僕の場合はまず「みりんありき」なんです。これは日本料理(≒関西由来のオーセンティックな料理屋の料理体系)がそうだからです。 この体系において、醤油とみりんは1:1が基本。だからすごくわかりやすいんです。 濃い味の煮物ならダシ、醤油、みりんが8:1:1(八方ダシ) 薄味なら16:1:1 天ダシは5:1:1(ただしこれは昔ふう) 幽庵焼きなら酒、醤油、みりんが1:1:1 など。 もちろんこれらは「基準」なので、そこから微調整もします。僕の場合は煮物はみりんを減らし、焼き物は増やすことが多いですが、そういうこともこのシンプルな基準値があるからやりやすい。 基準値にはもっとみりんが多いパターンもあります。 例えば煮魚は醤油、みりん、酒が1:2:3。かなり甘めってことです。そしてこれをさらに甘く調整しようとした時に、ここで初めて砂糖が登場するのです。カレイを煮るなら1:2:3ですが、鯛かぶとだとここにどさっと砂糖が加わる、みたいな。 みりんの対醤油比は200%が限界、みたいな感覚があります。 また、無闇に水分量を増やしたくない時にもみりんが途中から砂糖に切り替わります。例えばすきやきの割下的なものだと、1:1:1を基準にもっと甘くしたいときはそこから先はみりんではなく砂糖を加える、みたいな感じですね。 みりんの「煮崩れない」「照りが出る」みたいな効果は、実証はされているようですが、実際の料理に使う濃度レベルだとそれほど劇的なものではないとも感じています。だから「砂糖+酒」で置き換えても特に大きな問題は無いというのはその通りかもしれません。 日本料理ではない、つまり家庭的な和食においては、みりんよりも砂糖が甘味のメインになる地域が多いと思いますが、それはそれでちゃんと成立しているはずです。 ただ、砂糖よりもみりんを中心に据えると、上に書いたようにバランス調整が容易で、結果、計量前提の調理もやりやすい。なので個人的にはおすすめです。 また物性はともかく味の上でも、甘味が甘味だけ突出しにくく、穏やかなコクもあって、砂糖より使いやすいとも言えると思います。