匿名
先日スープカレーを作りました。スープは市販の素、チキンは塩してグリル、野菜は蒸して素揚げ、最後に一皿に盛り合わせます。おいしくできたのでいいのですが、こんなに各々バラバラに調理して最後にガッチャンコする料理ってなかなかないなと思いました。スープカレーの仲間、ご存知ですか?
「スープカレーとは椀盛の一種である」 というのが自論です。 椀盛っておわかりですか? これはいわば懐石料理のメイン料理で、別々に調理したいろんな具を取り合わせ、そこに調味したダシをたっぷり張る料理。 一見「具沢山の汁物」ですが、豚汁のようにエイヤで全てを一緒に煮るものとは根本的に別の、贅沢な料理です。 よく似たものに会席料理の「碗物」もあります。こちらはもう少しコンパクトでシンプルですが。 椀盛には必ず明確な主役が入ります。真丈とか焼いた魚とか、この時期なら牡丹鱧とかですね。そこに別で炊いた野菜や、湯葉や焼いた生麩、などが添えられます。 チキンが主役になって、各種野菜が添えられ、そこにスープをたっぷり張ったメインディッシュ、というスープカレーの構造は、完全にこれだと思います。 現代の日本において、この「椀盛」は、懐石料理を別にすればほぼ全滅していると思います。 手間も原価もかかる、ある意味日本料理の粋みたいな料理なのに、現代の「メインディッシュ」の概念からは遠くなってしまったからではないかと思います。 しかし一年に一度、日本人が一斉に椀盛を食べる日があります。何だかわかりますか? お雑煮です。お餅を主役に、似たり茹でたりした野菜、蒲鉾、時には伊達巻きや焼き魚なんかも取り合わせて、ダシを張ります。 というわけで、スープカレーに似た料理、それは「お雑煮」ということでいいかと思います。 お雑煮の他にもうひとつ、「椀盛」のDNAを今に受け継ぐ料理があると思っています。 それがラーメンです。 主役が麺というのはかなり変則的ではあるのですが、別で調理した準主役のチャーシューが中心となり、別で煮たメンマや茹でたほうれん草やナルトが加わるラーメンという食べ物は、かなり碗物に近い食べ物です。中国などの麺料理とは全く発想が異なります。 最近ではチャーシューだけでも2種類乗ったり、自慢の味玉が乗ったり、ますます椀盛の方向に進化している印象です。 椀盛には必ず柚子皮や木の芽などの「吸い口」が乗りますが、今どきのラーメンは、知ってか知らずかそんな文化まで受け継いでいます。 失われつつある椀盛という文化を、しぶとく受け継ぐ「お雑煮」、さらに衰退が進む現代に、突然それを復活させるかのように進化した「ラーメン」、斜め上の方向からそれを受け継いだスープカレー、これらは「ネオ椀盛」というカテゴライズが可能だと思っています。