
匿名
おでんの具材と出汁の兼ね合いに悩みます。牛すじは好きだけど出汁には欲しくない、出汁として練り物は少し欲しいけど練り物は好きじゃない。おでんという完成品のために仕方なく食べてます。こぶ、大根、蒟蒻、がんもがいれば十分という気持ちと、その出汁に満足できるのかという旨味不足への不安があります。
正直、今僕はむしろ僕の方が相談者さんに相談したいくらいの気分です。 というのも、今や僕のおでんは「湯豆腐」になってしまっているからです。 おでんが好きで、その「好き」を長年にわたって突き詰めた結果、それは湯豆腐になってしまったのです。 何を言ってるか訳がわからないと思うのですが、順を追って説明します。 おでんにおける相談者さんの価値観と僕自身の価値観は、極めて近しいものだと思いました。 僕もまさに、牛すじそのものは好きだけどダシにはその影響を及ぼしてほしくない。練り物も食べたくない。全くもって同じです。 しかし相談者さんと大きく違う点も2点あると思います。 ・練り物はあんまり食べたくないだけでなく、ダシにも影響を及ぼしてほしくない ・大根はいらない じゃあ僕がおでんで何が食べたいかと言うと、絶対に食べるトップスリーはこちらです。 ① とうふ ② 昆布 ③ 厚揚げ しかしおでん屋さんなどではこれ以外のものも食べたいので、 ④ がんも ⑤ 芋類(里芋やじゃがいも) ⑥ きんちゃく(できれば餅巾着ではなく五目きんちゃく) ⑦ 玉子 ⑧ こんにゃく ⑨ しらたき といった物も頼みます。 これ以外にも、 ⑩ 湯葉、つみれ、レタス、車麩、生麩、水菜、わかめ といった定番外も、もしあれば頼みます。 この一連のラインナップのほとんどに共通するのは、 「ダシがうまくてナンボ」 です。 なので、おでんを外で食べるなら、ダシがうまいかどうかが最大の基準になります。 自分で作るなら、死ぬ気でうまいダシを引きます。もちろん調味料のアタリも入念に調整します。当然の結果として、外で食べるより(主観的には)うまいダシになります その結果、この「完璧にうまいダシ」を何者にも汚されたくない、という思いは極めて強いものになります。 牛スジにも練り物にも汚されたくない。大根にすらも。 先ほどのランキングのかなりの部分は「豆腐製品」で占められています。 そして、トップスリーに関しても、ひとつの気付きがあります。 厚揚げは堂々の第三位なのですが、よくよく考えると、僕にとってそれは「豆腐の下位互換」なのです。豆腐だけじゃ何だから厚揚げにしとくか、みたいな。 結局のところ僕にとっておでんとは、 「豆腐と昆布と何にも汚されないうまいダシ」 があればそれで完結してしまうんです。 それはすなわち湯豆腐です。 相談者様、僕はいったいどうしたらいいんでしょうか。 近年、一応この煩悶に対する答えはいくつか導き出しました。 それが、東京ならではなの真っ黒なおでん、そして名古屋の味噌おでんです。 そもそも関西風の澄み切ったダシのおでんをこよなく愛していた僕は、かつてはそれらは眼中にもありませんでした。 しかしその大好きだったはずのおでんが「湯豆腐」に着地してしまった今となっては、わざわざお店に食べに行くおでんはこの二つしか有り得ません。 もちろんそういう店でも頼むタネは基本、ほぼ前述の通りではあり、相変わらず練り物や大根は絶対に頼まないんですけど。 そんなわけで僕は相談者さんの質問に答える資格はまるで無いわけなんですけど、あえて無理やり答えるなら、 「まあそういうしち面倒くしゃあことは言っとりゃあすな。とりあえず名古屋の味噌おでんでも食べてみたってちょう」 といったところで勘弁してください。