
匿名
焼肉の楽しみ方が分かりません。何を食べても大体同じような「肉とタレ」味だし、だいいち焼き加減が気になって味に集中できません。どうして焼肉ってこんなに人気なんでしょうかね。
僕は決して焼肉が嫌いというわけではありませんが、相談者さんのおっしゃっていることもとても良くわかります。 そこでどう楽しむかの話ですが、焼肉は言うなれば究極のオカズ味であり、それを楽しむには米が不可欠、というのが僕の意見です。 (逆に米無しで肉を食べるなら、ステーキ屋さんとかフレンチを選びたくなります) 焼肉屋さんでは、甘じょっぱいタレの味を纏った少量の肉と大量の米を口の中にパンパンに詰め込み続け、米肉米肉米米肉と途切れることのないグルーヴ感を堪能するひと時こそクライマックスと信じて疑いません。 大きな皿に希少部位がさまざまに盛り付けられ、そこに木の札で「ザブトン」「ミスジ」「サンカク」などと示される粋なタイプの店がありますが、そういうところでも結局僕はそれらを「肉」としか認識していない気がします。 柔らかい肉は米と一体化し、硬めの肉は米に埋もれてなお存在を主張し続ける。そして脂が多いほど米は加速する。そこにある個体差はそれだけです。無粋ですみません。 希少部位盛り合わせに限らず、普通の上カルビなどでも、一枚一枚に個体差はあるので、最終的に求めるグルーヴから逆算して焼く順番を決めるのも楽しいひと時です。 焼き加減は確かに大事です。そしてなかなか難しい。 しかし口の中では猛然と咀嚼を行いながらも、目は常に網の上の肉を注意深く凝視し続けるのもこれまた楽しいものです。 僕の場合、一枚の肉をひっくり返したタイミングで次の肉を乗せる、という「2枚置き」スタイルが、自分のグルーヴに合っていますが、柔らかく脂の多い個体なら少々焼き過ぎでも米は受け止めてくれると、おおらかな気持ちで臨みます。焼き加減は大事だけど、必ずしも100点じゃなくてもいいんだよ、的な。それでも米が何とかしてくれるから。 何なら本当は、ちょうど良く焼けた端から全部皿に取ってしまってもいいと思っています。完全に冷めきってしまうのでなければそれでおいしさが損なわれるわけでもありません。いやむしろそのほうがおいしい気もします。普通は肉を焼いたら「寝かせ」でしょう? しかしそれをやると同行者の不興を買いがちですし、たとえ一人だったとしても流石に風情を無視しすぎなので、なるべく自重します。 しかしここでひとつ問題があります。 いくら焼肉には米、と言っても、最初からそれをやると食事が確実に30分以内で終わってしまう。下手すりゃ20分。これは耐えられません。 なのでその前にナムルつまんだり、肉は白物や塩味の物をからめつつ、赤身系もちょっとはフライングしながら、粛々とビールで進行します。ちなみにこのターンにおける僕の主軸は「ハツを塩で」です。 悪くはない。このターンも。しかしその間もやはり頭のどこかで、焼肉はタレで、そして米だよな、と考え続けています。 後に米を最高のコンディションで迎えられるように、食べる量も飲む量のコントロールも考え続けています。 僕が定期的に行ってる焼肉屋さんがあります。焼肉屋さんというか、元々はしゃぶしゃぶとすき焼きをメインとした日本料理屋さんなんですが、今ではお客さんのほとんどが焼肉目当て、という少し珍しいタイプの店。和牛オンリーです。 僕がそこに通う理由は、肉やタレのおいしさもさることながら、そこのコースの内容です。 ざっくり説明すると、野菜中心の会席料理が6品ほど一通りの流れで出てきて、最後の最後に焼肉5カンとご飯が出てくる構成。 僕は会席パートでゆっくりゆっくりビールを飲み、焼肉が登場するとそれをスッパリ終えてご飯に集中します。ご飯は必ずお代わりもします。僕はこの店のこれこそが、焼き肉という料理を楽しむ最高のスタイルなのではないかと思っています。 (こういう店はなかなか無いかもしれませんが、そういう時はハイブリッドはしごです。) それはそうと焼肉って人気ありますよね。 そしてその人気を支えている真の焼肉ファンがもしこの文章を読んだら、こめかみに青筋をピキピキと浮かび上がらせてしまうのではないかとさっきからヒヤヒヤしています。 焼肉にこそ生ビールだろう! 火傷しそうな熱々の肉を頬張ってそこにビールを流し込むのが(ry 白飯食ってんじゃねえよ! なーにがフレンチだしゃらくせえ! 焼肉は最終的に白物に行き着くんだよ! いい肉は塩。山葵醤油も悪くない。特にトモサ(ry 本当にうまいタンを食(ry 部位ごとの味の違いもわからんやつがそれ食うな! なーにが会席だしゃらくせえ! 焼肉5切れなんて食ったうちに入んねえよ! すみません、全て正論です。受け止める覚悟はあります。 僕は普段、お店ではなるべくそのお店が推奨するであろう流儀に従う、という基本ポリシーを持っています。 当然かつては焼肉屋でもそれを守ってきたつもりです。しかし今では「守破離」によって自分の型を身につけてしまいました。そこに悔いはありませんが、若干の後ろめたさがあるのは正直なところでもあります。 なので、お気に入りの店の焼肉会席に身を委ねることが何より心地よいとも言えます。 相談者さんもぜひ、自分のスタイルとお気に入りの店を見つけて、焼き肉をもっと楽しんでください。