アールエフワンは必ずくらい覗きますかね。 ディスプレイの美しさ、光の当て方、ツヤの出し方、時間を置いてもヘタれない技術、テクノロジーの粋が極まってて、「到底真似できない」と絶望的な気分になるところまでがセットです。 アールエフワンはもうひとつ見どころがあります。ここは昔はもっとずっと庶民的な店でした。「海老とブロッコリーとゆで卵をマヨネーズで和えたサラダ」が看板商品だった時代です。庶民的なわかりやすい商品はもちろん今でも健在ですが、同時に今はデパ地下で一番くらい尖った商品も並べています。こういうメジャーどころの「どこまで尖っても許されるのか」という判断は興味深いですし、楽しいです。 　 近年定点観測していたのはフレンチデリの店です。最初は正統派のフレンチデリ、という感じだったのが、徐々に和風アレンジを加えた創作料理とか、どう見てもイタリア料理とか、ハンバーグとかコロッケ（うっすらフレンチめいたアレンジ）なんかを置くようになり、コンセプトを軌道修正せざるを得なくなった様子を見て「日本人は実はフランス料理がそんなに好きではない説」に確信を深めています。 　 東京や大阪のデパ地下で「お惣菜のまつおか」が健闘しているのも見てて楽しいです。なんだ結局名古屋の人に限らずみんなテカテカ甘辛コッテリのおかず大好きじゃん、みたいな様子を見てなぜか少しホッとします。 　 これらに限らず、デパ地下に寄ったら基本的に時間の許す範囲でぐるっと一周見て回ります。見てる間中ワクテカしてますが、実はあんまり買いません。なんでだろう。純粋に味の好みや満足感、価格を勘案して「だったら成城石井にしとこう」と思ってしまうのかもしれません。買うくらいなら作りたい、というのも根本にありますね。 　 たまにガッツリ買いまくるのはディーン＆デルーカです。わざわざ買うだけの特別感があると感じてるんだと思います。ちゃんとレストランの味だし、おいしすぎないものはちゃんとおいしすぎない。パンやチーズも含めワンストップでフルコース揃う。 ただし高い！　ちょっと油断するとあっという間に一人当たり3000円分超えます。でも、普段は成城石井でここぞという時はここで腹括って散財、というのは、その中間を彷徨うより満足度が高いと信じています。 　 そういえばある時、その日もディーン＆デルーカで散財しようとしていた時のことです。 その時は特に欲望フルマックスな気分だったので、「もっとボリュームを！」「もっと刺激を！」と考えてたら、その欲望はディーン＆デルーカのスペックすら超えてしまっていることに気付きました。 そこで僕は、メインは買わず、前菜を数品とパンとチーズだけ買って、メインは場所を変え、シターラさんのデリでインド料理を買いました。 この体験が素晴らしかったのです。流れを真剣に計算して両店で綿密なチョイスを行ったこともあり、これこそ最強の組み立てと確信しました。これをレストランで出せたらもっとすごいぞ、しかも２系統の料理が独立してるんじゃなくてもう少し交錯してたら更に楽しいぞ、と妄想は止まることを知らず、結局僕はそういう不定期イベントを自分で初めてしまうことになります。 その時点では「モダンインディアン」という言葉すら知りませんでした。 　 そして後に 「いろんな国でいろんな人の好きが偶然繋がって潮流になる（大意）」 というカジヒデキ氏の言葉の重みをひしひしと感じることになるのです。