匿名
¥500
日本に住んでいる中国人でして、 京都で懐石料理を食べる機会があり、同行者の日本人は皆絶賛していたのですが、私はあまり楽しめませんでした。 勿論、お造りや天ぷら、締めで出てきたスッポンの玉子とじ丼や天丼、拉麺等の分かりやすいものはとても楽しめたのですが、懐石の華である筈の椀物や炊き合わせ、焼き物が自分にとっては難解でした。 和食について美味しんぼで読んだくらいの知識しか持ち合わせておらず、出汁にも慣れ親しみがそこまでないので解像度が低かったのが原因かと思ったため、 先ずは勉強しようと思うのですが、懐石の勉強にオススメの本とかありますか。
世界の料理を知るほどにつくづく思うのは、和食ってなんて特殊な調理体系だろう、ということです。だいたいの国は、遠く離れていても不思議と共通性がある中で、日本だけはそれがさっぱり見当たらないことがよくあるのです。 例えば、何らかの香味野菜を油で炒めて油に風味を移すところから様々な料理がスタートする、というのは、様々な国で黄金パターンです。基盤と言ってもいいくらい。地域によりその香味野菜が玉ねぎ人参セロリだったりニンニク生姜だったり、そこに唐辛子など香辛料が加わったりといった違いはあれど、パターンとしては同一。しかし和食ではそこがすっぽり抜けています。 中国は特に、お隣で文化的な影響も受けまくってるはずなのに、どうして料理だけはこうも違うのかとよく思います。 ただし中国料理も紀元前まで遡ると案外和食と似ているようです。煮物中心で、生物もよく食べていた時代。土器の時代ですね。和食は土器の時代のままでひたすら我が道を進んできた印象です。 もっとも現代の日本人が日常的に食べているものは、だいぶ世界標準に接近しています。外国料理を節操ないくらいに取り入れ続けているだけでなく、和食の概念も大きく変化しているからです。 そんな中にあって例外的に「特殊すぎる料理体系」を堅持しているのが日本料理の世界で、その中心にあるのがまさに懐石料理だと思います。そしてそれはもはや少なからぬ日本人にとってすら、価値がわからないとまでは言いませんが、特に積極的に好まれるというものでもなくなっているように思います。 前置きが長くなりましたが、そんな懐石料理を理解するために最適な本とは、ずばり、プロ向けの料理書だと思います。 なぜなら僕自身も20代の終わり頃までは、(多くの日本人同様)懐石料理の良さなんてちっとも理解できていなかったのが、それでようやく、懐石料理が何を良しとして何を目指しているのかを理解できたからです。 不思議なもので、その精神や技術を理解すると同時に、たちどころにおいしさも理解できるようになりました。それどころか、あらゆる身近な、それまで何の有り難みも特に感じなかった素朴な和食まで輝いて見えるようになりました。それに気付けたことは超特大級の財産です。 さて、その本とは柴田書店の「懐石料理」という本です。先ほど調べたら既に絶版になっているようで、元々高い本でしたがさらにプレミアが付いて、最安で8760円でした。 もう少し安くて入手しやすい本も探せばあるかもしれませんが、とりあえずこれをオススメします。実は僕はこの本をかつて後輩に上げてしまっていたので、この機会にと思って今回買い直してしまいました。貴重な在庫が一冊減ってしまいました。そしてこの相談箱をこんな最後まで読んでしまうような人は、まあまあな確率でポチってしまいそうな気もします。 お買い求めはお早めに!