匿名
自炊レパートリーの幅を広げようと豆味噌を購入しました。普段の無添加みそを置き換えて味噌汁や豚汁を作ったのですが塩分量が違うのかイマイチしっくり来ません。赤だしの味噌汁を作るうえでコツやポイントはありますか?
豆味噌の特徴は、その独特の風味もさることながら、甘みがほとんどなく、しっかりと酸味が感じられるその味わいにあります。また、そういうソリッドな味であるため、体感的なしょっぱさより実際の塩分はかなり低めです。 なので一般的なイメージと異なり、それ単体では「コク」のようなものはほとんど感じられません。たいていの味噌はそのまま舐めてもおいしいものですが、豆味噌は素直においしいというより「珍味」といった感じの味わいです。 ですので、豆味噌の本場では使い方に2種類の鉄則があります。 ①しっかりダシを効かせる ②砂糖などでしっかり甘みを付ける つまり単体では決定的にかけているコクをしっかり補い、酸味のカドを叩く、ということになりますが、実はそれだけではなく、そのことにより豆味噌本体に元々隠れていた独特のコクを引き出す、という意味合いもあります。 味噌汁の場合は基本①ということになりますが、そこにはちょっとした「プロの裏技」もあります。味醂を少しだけさすのです。いわば②の手法を隠し味的に取り入れているということになりますね。お店で出てくる赤だしはそういうものが多いです。 しかし慣れてくると、この味醂は邪魔に感じることもあります。せっかくのソリッドな味を丸くしたくない、というモードに入るわけです。そうなると、ダシも特に濃くなくてもよくなります。しっかり酸味を味わう味噌汁です。 それがさらに進むと、最終的には、豆味噌をお湯で伸ばしてコトコト煮込んだ「味噌湯」というものになります。スープでもない、清涼飲料でもない、僕が「謎汁」と呼んでいるカテゴリー。ラッサムの元々の姿とも少し似ています。 ここまで到達できたら(そんな人は本場でも少数派ですが)、あなたは立派な豆味噌好きです。 味噌湯のコツは、コトコトと時間をかけて煮る事です。そして味噌湯に限らず、豆味噌が他の味噌と決定的に違うのがこれです。 普通、味噌は「グラグラ沸かしてはならない」「煮えばなを食べる」のが鉄則ですが、豆味噌は逆です。むしろしばらくコトコト煮立てた方が良いのです。 また豆味噌の味噌汁は、なるべく具を少なめ、シンプルにするのがコツです。そして人によっては、キャベツ、玉ねぎ、じゃがいも、白菜などの甘味が出る具を嫌う人もいます。僕も概ね賛成です。豆腐のみ、なめこのみ、しかも少量、みたいなやつがおいしいと思います。ちなみに僕がいちばん好きなのは三つ葉。三つ葉だけの味噌汁なんて、豆味噌じゃないとなかなか成立しないかもしれません。最高です。 そういう意味もあって、僕は、豚汁には豆味噌単体は合わないと思っています。その代わり、合わせ味噌の一部として入れると抜群の効果を発揮します。 しかし愛知県でこの発言をすると秒で怒られが発生します。 「たーけたこといっとってかんわ。豚汁こそ豆味噌に決まっとるがね」 あんまり言うと簀巻きにされて三河湾に浮かぶことになります。