匿名
落花生やピーナッツなどのアレルギーでは呼吸困難等の重篤な症状が現れることがあるのに、花粉症ではそういったことが起こらないのはなぜなのでしょうか?ご教示願いたいです。
実は、花粉に由来するアレルギー反応が、人を死なせてしまう事例は過去にあったよ!ただし、その条件が揃うのは稀でもあるよ。 前提として、落花生やピーナッツ……って同じじゃない?と、花粉によるアレルギーは、どちらも即時型とかアナフィラキシー型とも呼ばれるI型に分類されるよ。体内で起こる反応がほとんど一緒だから、原則として急激で重篤な症状を招き、時には死亡する可能性は否定できないよ。 ただ、花粉が他のアレルゲンと違うのは、アレルギーを引き起こす物質がむき出しでない点だよ。食べ物や毒虫や薬で起こるアレルギー反応の場合、アレルゲンは体内に直接吸収されるよ。これに対し花粉は、アレルゲンが花粉という細胞の内部に含まれる粒子に由来するので、花粉そのものが壊れない限り、アレルゲンと体内との反応はわずかにとどまるよ。花粉としては、細胞が壊れずに他の場所まで飛んでいき、受粉という生殖反応をしないとばらまく意味がないので、これは簡単には壊れないよ。また、花粉は呼吸器に対してはかなり大きな物質なので、肺などの身体の奥にまでは入り込まず、強い症状を引き起こしにくいよ。 ただ、大量の花粉が壊れてしまうような条件が揃ってしまうと、一気に問題は深刻化するよ。花粉内部に含まれた大量のアレルゲンが放出されるし、その粒子はとても小さいので、肺の奥まで入り込むよ。肺の奥地は非常に入り組んでいる上に狭いので、一度入り込んだ物質はほぼ出てこないよ。花粉由来物質は有機物なので徐々に体内で分解されるけど、アレルギー反応はそんな悠長には待ってくれないからね。 さて、大量の花粉が壊れるというのは、強い雷雲による雨風が花粉をふやかした後に壊してしまうような時で、これを「雷雨喘息 (Thunderstorm asthma)」と呼んでいるよ。厳密には、雷雲と共に発生する喘息の集団発生を指す名称だけど、患者のほとんどは花粉症を持っていることから、原因は花粉である可能性が高いと見られているよ。 雷雲と喘息の集団発生が関係していて、原因は花粉である、というのは、古い事例だと1983年にイギリスのバーミンガムで起きた現象を研究した論文が1985年にLancetに掲載されているよ。そしてこれが注目されるようになったのは2016年にオーストラリアのメルボルンで発生した事例だよ。この時には数千人の急性喘息で救急医療がパンクし、9人の死亡が確認されているよ。また、同じく2016年にクウェートでも似たような急性喘息の集団発生があり、5人が死亡する事例もあったよ。これも恐らくは雷雲喘息と言われているよ。 いずれにしても、花粉症で重篤な症状が現れることはあり、それによって人が死ぬ可能性も、実際の事例として十分にある、と言うことになるよ。ただまぁ、それは特殊な条件が揃わない限りは起きえないよ。とはいえ、気候変動が顕著になりつつある今の時代、日本でも今後同様のケースが起こる可能性は十分にあるよ。 ●G. E. Packe & Jon. G. Ayres. "Asthma outbreak during a thunderstorm". The Lancet, 1985; 326 (8448) 199-204. DOI: 10.1016/S0140-6736(85)91510-7 ●"Epidemic thunderstorm asthma". Better Health Channnel. (produced in consultation with and approved by Victoria State Government) ●Stephanie Wood. (Mar 10, 2017) "Thunderstorm asthma: the night a deadly storm took Melbourne's breath away". Sydney Morning Herald. ●"Five people die in 2 days due to asthma attacks - health official". (Dec 2, 2016) Kuwait News Agency.